「“属性”から“個の活躍”へ」(後編)
KDDIが描くDE&Iの進化と、スポンサーシップが生んだ組織変革
- 社名
- KDDI株式会社
- 所在地
- 東京都港区
- 業種
- 電気通信事業
大野宏様
末木麻由様
佐藤祐子様
※本記事における登壇者の所属名および掲載写真につきましては2026年3月取材時のものとなります。
― 次期経営人財を育むスポンサーシップ。個の変革から、KDDIが描く2040年のビジョン実現へ
前編では、KDDIがDE&Iの推進において「数値目標」から「個の活躍」へとコンセプトを再定義し、次期経営人財育成のためにスポンサーシッププログラムを導入した背景をお伝えしました。 後編となる本記事では、実際にプログラムの1期生として参加した女性リーダー(佐藤様・末木様)の自己変革の軌跡に迫ります。
上位層が伴走する1on1や、上位会議での議論を“シャワー”のように浴びる経験を通じ、視座を高めながら「リーダー像は一つではない」と自分らしいリーダーのあり方を切り拓いていくプロセスをたどります。
そして記事の後半では、このスポンサーシップから生まれる一人ひとりの「個の変革」が、いかにしてチームへ波及し、最終的にグループ全体の事業貢献や価値創出へと繋がっていくのかを紐解きます。KDDIが描く「2040年に社員と管理職の男女比率が一致する世界」というビジョンに向けた力強いストーリーに、引き続き川嶋が迫ります。
目次
スポンシーの声
― 不安と戸惑いから始まった自己変革の1年
川嶋:
改めて、スポンサーシッププログラムへの参加が決まった時、率直なお気持ちはいかがでしたか?
佐藤様:
正直に言うと、まず「スポンサーシップって何?」というところからでした。海外では一般的だと調べて知りましたが、「一年間何が始まるんだろう」「本当に私でいいのか」と不安の方が大きかったです。
末木様:
私も同じように本当に青天の霹靂で驚いたことを覚えております。「スポンシーとは何か」「どのような制度か」と色々調べましたが疑問と不安しかなかったです。
育休からの復職直後で同時に異動したばかりのタイミングでしたので、「なぜ私?」という疑問の方が強かったですね。

川嶋:
そこからどのような変化や気づきがありましたか。
佐藤様:
一つ目の転機は、1クォーターが終わった後に気持ちの変化があったことです。
スポンサーと1on1をしていく中で、自分の経験・強み・弱みを棚卸しし、「私は何にモヤモヤしているのか」「どうなりたいのか」を言語化しました。
それを本部長にぶつけたとき、返ってきたのは意外な言葉でした。
「私も同じことで悩んだよ」と。自分だけが不安なのではない。
皆、通る道だと知ったところから、前向きに考えるようになり、これは社内の誰もが参加できるプログラムではないので、自分も頑張ってみようと前向きに捉えるようになりました。
二つ目の転機は横のつながりでした。スポンシー同期の皆さんがどのような悩みを持っていて、どんな活動をしているかを共有し、共感し合う機会を作っていただいていたことと、事務局の皆様にフォローしていただき、悩みを聞いていただき、共感していただいことで、頑張ろうと思えました。
末木様:
私の場合は当初は自己理解が甘く、リーダーになるレベルに全然到達してないということを自身で知ることになり、本当に自信がなかったです。それを正直にスポンサーに伝えたところ、スポンサーが私のために一年間の成長計画を作成してくださいました。
「こんなに期待してくれている」と感じたことが大きかったです。そこで前向きな気持ちに変化しました。
さらに、子どもの体調不良が重なったりと、スポンサリングや1on1が進まない時期が2、3ヶ月あり、自分を責めていました。しかしスポンサーは、「それでいい。できなかったことも含めて言語化すればいい」と言ってくださいました。
ありのままを受け止めてもらえたことが、再び前に進む力になりました。

視座が変わる瞬間 ― 上位会議の“シャワー”と多様なリーダー像の発見
川嶋:
ではプログラム後半での変化は何がありましたか?
佐藤様:
上位会議への同席です。
私の元々の課題として、視座が低い、視野が狭いということがありました。
そのため、上位会議へ同席することで組織としてどういう判断軸でどういう判断をしているのか、上位目線での仕事の進め方や、判断ポイントをシャワーのように浴び、肌で感じることができたことが大きかったです。
そのおかげで担当目線から、リーダー目線へ、自分の視座が一段、二段と上がった感覚がありました。
また、1on1の機会も非常に大きかったです。スポンサーご本人の経験に基づいた率直なアドバイスをいただくことで、不安が軽減され、自分が目指したい姿を具体的に描けるようになりました。
さらに、直属ではない斜めの関係にあたる本部長との1on1もありましたが、お二人のリーダーシップスタイルが大きく異なっていたことも印象的でした。
そうした違いに触れる中で、自分の中の「リーダーはこうあるべき」という固定観念が崩れ、私は私でいいと理解できるようになりました。
末木様:社会人生活で一番学んだと思うほど濃い凝縮した1年間でした。「成長した」と自信を持って言えるくらい成長を感じた1年でした。マインド、視座、視野の拡大が一番大きい変化です。
特に印象的だったのは、上位層の会議に参加した後、必ずスポンサーが1on1で振り返りの機会を設けてくださったことです。
会議に参加する際には、「内容をすべて理解しようとしなくてよい。それよりも、なぜその発言がされたのか、なぜその順番で話されたのか、といった観点で見てほしい」と事前に視点を示していただきました。
そのうえで、会議後には振り返りを通じて気づきを言語化し、言語化すれば気づきがあり、そこから次の行動につなげていく。そして、行動を起こしたらできたこと、できなかったことがあり、その結果をまた言語化し、スポンサーからフィードバックをいただく——そうしたサイクルが自然と習慣化されていきました。
この循環が習慣化した結果、自分の成長につながっていったと感じています。
川嶋:
お二人のお話を伺い、多様なリーダー像を受け入れたうえで、ご自身なりのスタイルを模索されてきたプロセスに非常に感銘を受けました。 直属や斜めの関係から学ぶ「クロススポンサリング」や、経営層の議論を“シャワー”のように浴びる「上位会議への同席」。こうしたプログラムの意図的な設計があったからこそ、自然と視座が引き上がり、「自分はどうありたいのか」というリーダーとしての在り方を主体的に築いてこられたのですね。

周囲に与える影響力 ― 自律と支援の両輪で組織を変える
川嶋:
では、スポンサーシッププログラムを経て、ご自身の成長が周囲への関わり方や働き方、また周囲に与える影響にどのような変化をもたらしたと感じていらっしゃいますか。
佐藤様:
この1年間のプログラムを通じて得たたくさんの学びを、組織運営や若手・経験の浅いメンバーの育成に還元していきたいと考えています。
特に、このプログラムで実感したのは、「自分自身で成長する(自分で自分を引き上げる)部分」と「リーダーやスポンサーが引き上げる部分」を意識的に分けて関わることの重要性です。その視点を持つことで、メンバー一人ひとりの成長をより効果的に支援できるようになったと感じています。
また、個人目線ではなく一歩引いた組織目線を意識したフィードバックができるようになったことも大きな変化です。そうした関わりを通じて、メンバー自身の気づきにつながるだけでなく、自分自身の成長にもつながっていると感じています。

末木様:
周囲には「リーダーはこうあるべき」という考えを持つ方も多いと感じていますが、私はそうした枠にとらわれず、自分らしいリーダー像を体現していきたいと考えています。
例えば、保育園や小学校の送り迎えもしますし、中抜けすることもありますが、その中でもしっかりとミッションを遂行する。その姿を見せること自体も、一つのリーダーの在り方だと思っています。いろんな事情がある中でもできるよということを示せるよう、心掛けていきたいと思っています。
また、このプログラムを通じて人脈が広がり、業務が進めやすくなった経験もあったため、そうした価値もメンバーに還元していきたいと考えています。
さらに、人は短期間でも変わることができるということを自分自身で実感しました。だからこそ、今度は自分が周囲のメンバーに火をつけてあげられる存在になりたいと思います。
一人ひとりの可能性を信じ、その成長を支援していくことで、個人も組織も成長させていく。そうした循環を生み出せるリーダーでありたいと考えています。
川嶋:
本日お話を伺い、あらためてお二人の変化と成長の大きさに深く感銘を受けました。ご自身の内面と向き合いながら視座を高め、組織目線を獲得されただけでなく、その成長を次世代や組織全体へと広げていこうとされている点に、リーダーとしての確かな在り方を感じ、大変頼もしく思いました。
お二人のような存在が組織の中で広がっていくことで、個人と組織の双方がよりしなやかに、そして力強く成長していく。そのような未来につながっていくことを確信しています。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
2040年に向けたビジョン― 個から始まる変革を、グループ全体の価値創出へ
川嶋:
改めて大野さんにお伺いいたします。今後のDE&I推進のビジョンや目指す姿を教えてください。
大野様:私たちが大切にしたいのは、「個の違いを掛け合わせて組織の強みにつなげていくこと」ですこの変化がKDDI単体を超え、グループ全体、事業への貢献につながっていく、そんな景色を描いています
その通過点として2040年に社員の男女比率と管理職の男女比率が一致する世界を目指しています。これは単なる数値目標ではなく、組織のあらゆる意思決定の場に多様な視点が自然に存在している、DE&Iが自然に機能している姿だと捉えています。
ただ、全社一律の目標を置いて、そこを必達というアプローチではなく、各事業部や部門によってDE&Iにおける課題は異なりますので、それぞれの課題に向き合うことが重要です。それぞれの事業特性や部門特性に応じた本質的な課題にきちんと取り組み、その解決の積み重ねの先に、2040年のあるべき姿が実現されると考えています。
もう一つ重要なのが、社員一人ひとりがDE&Iの方針を自分ごととしてとらえる組織風土の醸成です。自身の強みを理解し、他社の違いを尊重しそれを組織の活力に変えようとする文化は一朝一夕にはできません。そのために、まず当社のDE&Iに対する「認知」を高め、正しく「理解」し、その上で「共感」し、最終的に「行動」へとつなげていく。このステップを着実に積み重ね個人の変化がチームを変え、それがグループ全体の大きな変化となっていく。私たちはこのステップを着実に進め、一人ひとりが違いを活かし、共通の目標に向かう風土を育てたいと考えています。
最後にお伝えしたいのはDE&Iは特定の属性の人たちのためのものではない、ということです。全社員一人ひとりに応じた施策設計や環境作りこそが私たちのこだわりです。一人ひとりが最大限自身の強みを組織に出せる環境を目指し、変わり続けます。

川嶋:
本日のお話を通じて、大野様が描かれているDE&Iのビジョンは、「個の変化」を起点に、組織、そしてグループ全体へと波及していく非常に一貫した思想であると感じました。
こうした「個を起点とした変化」が組織の力へと転換されていくプロセスは、まさにこれからの企業に求められる在り方の一つだと思います。KDDI様の取り組みが、今後どのように広がっていくのか、大変楽しみにしております。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
個の変化が、組織を変える
今回のインタビューで印象的だったのは、「個の活躍」という思想が、理念にとどまらず、具体的な制度設計や育成、そしてスポンシーの変化にまで一貫していることでした。
一人の変化が、チームへ。
チームの変化が、組織へ。
組織の変化が、グループ全体へ。
KDDIのDE&Iは、今まさに“属性の多様化”から“個を組織の強みに活かすフェーズ”へと進化しています。


インタビュアー
ウーマンズリーダーシップインスティテュート株式会社 代表取締役
川嶋 治子(かわしま・はるこ)
川嶋 治子(かわしま・はるこ) ウーマンズリーダーシップインスティテュート株式会社 代表取締役 早稲田大学大学院経営管理研究科卒業 経営学修士(MBA) DE&I推進、人的資本経営、女性リーダー育成、次世代経営層育成を専門とし、上場企業・外資系企業・官公庁に対して戦略アドバイザリーおよび組織開発支援を提供。これまでに延べ5万人以上の経営幹部人材育成を担い、 経営戦略と人材戦略を接続する“経営直結型”のアプローチに定評がある。 社外取締役や理事としてガバナンス領域にも貢献。
