DE&Iとは?意味・重要性・企業事例までわかりやすく解説

2025.07.10

近年、ビジネスシーンにおいて「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)」というキーワードが注目されています。企業において、多様性(Diversity)・公平性(Equity)・包括性(Inclusion)の3つの価値観は、企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するための重要な土台となっています。

しかし「言葉は知っているが、実際にどういう意味なのか、何をすればよいのかわからない」という声も多く聞かれます。本記事では、DE&Iの基本的な意味から導入メリット、具体的な推進方法、実践企業の事例まで、わかりやすく整理して解説します。

DE&Iとは

まずは、DE&Iがそれぞれ何を意味するのかを丁寧に解説します。単なる言葉の理解にとどまらず、背景にある価値観や考え方についても掘り下げていきます。

Diversity(多様性)とは

Diversity(多様性)とは、性別・年齢・国籍・宗教・障がいの有無・性的指向・価値観・ライフスタイルなど、人それぞれが持つさまざまな違いを受け入れ、尊重するという考え方です。企業における多様性推進とは、こうした多様な属性や背景を持つ人材を積極的に採用・登用し、それぞれの個性や強みを活かす組織づくりを指します。多様性は、組織の新しい視点やアイデアを生み出す源泉であり、イノベーションや創造性、柔軟な意思決定につながる重要な資産と位置付けられます。

また、企業文化や制度そのものが多様性に対応しているかどうかも問われるようになっており、制度面・意識面の両方から支援体制を整えることが求められます。心理的安全性を確保し、多様な人が対等に活躍できる環境こそが真のDiversityと言えるでしょう。

Equity(公平性)とは

Equity(公平性)とは、すべての人が平等に機会を得られるように、個々の状況や背景に応じた環境を整えることを意味します。「Equality(平等)」が一律に同じ対応をすることであるのに対し、「Equity(公平)」は一人ひとりのニーズや障壁を考慮し、それぞれに最適な手段で支援するという点が特徴です。

たとえば、同じ研修機会を与えるだけでなく、言語や文化、障がいなどに影響しない理解しやすい環境の整備も含まれます。企業がEquityを実現するには、制度やプロセスの見直しに加え、社員の意識改革も重要です。評価基準や昇進の仕組みにおいても、公平性を保つことが求められます。Equityの実践は、誰もが自分の能力を最大限に発揮できる環境を生み出し、組織の持続的な成長につながるのです。

Inclusion(包括性)とは

Inclusion(包括性)とは、多様な人々が組織の一員として受け入れられ、互いに尊重されながら安心して意見を発信し、活躍できる環境を整えることを指します。単に多様な人材が在籍しているだけでは真のインクルージョンとは言えず、それぞれの人が「自分の存在が組織にとって意味がある」と感じられる状態をつくることが必要です。

たとえば、会議の場で少数派の意見にも耳を傾ける文化や、役職や属性に関係なく発言できる心理的安全性がその一例です。企業がInclusionを実現するには、トップのメッセージや制度設計だけでなく、日々の業務やチームの関係性においても「共に働く」姿勢が浸透していることが重要です。Inclusionは、DiversityやEquityを実質的に機能させるための土台であり、それを欠いてはDE&Iの目的は達成できません。

DE&Iが注目されるようになった背景

もともとD&I(Diversity & Inclusion)という概念が先立ち、欧米を中心に組織の多様性と包括性を高める手法として広がってきました。近年はそこに「Equity(公平性)」の視点が加わり、DE&Iという概念が主流になっています。

従来のD&Iでは、「違いを受け入れる」ことが強調されてきましたが、実際には公平な機会提供や支援がなければ、多様な人材が本当の意味で活躍することは困難です。日本でも少子高齢化や労働力不足を背景に、女性、外国人、障がい者など多様な人材がフルに力を発揮できる環境整備が急務となっています。

しかし、多くの企業では、DE&Iを掲げながらも制度や風土が追いついておらず、表面的な取り組みに留まっているケースも少なくありません。また、日本企業は経営層自体の同質性が強く、そのような経営層自身が変わらなければ、DE&Iを推進しても形だけの施策となってしまう問題も挙げられます。今後は、理念と実践のギャップを埋める本質的なアクションが問われる局面に入っているのです。

なぜDE&Iが企業にとって重要なのか

ここでは、DE&Iを企業が戦略的に取り入れることによって得られる具体的なメリットを解説します。経営視点から見た意義を理解することが、DE&I施策を通じて、自社の目指す未来を実現するカギとなります 。

多様な人材の活用によりイノベーションを創出できるため

多様な人材を積極的に受け入れ、活用することは、企業にとってイノベーションを生み出す重要な土壌となります。異なる文化的背景や専門性、価値観を持つ人々が集まることで、多角的な視点からの意見交換が活性化し、新たな発想や問題解決のアプローチが自然と生まれやすくなります。これは、いわゆる「知の多様性」が組織内で機能している状態であり、変化の激しいビジネス環境においては大きな競争優位となります。

たとえば、製品開発においても、特定の層だけで構成されたチームでは気づきにくいユーザーニーズや、マイノリティの視点からの課題を発見できる可能性が高まります。さらに、多様性がある職場では、固定観念にとらわれない柔軟な思考が育ち、イノベーションが連鎖的に生まれる文化が醸成されやすくなります。

DE&Iを戦略的に推進することは、 組織全体の創造性と変革力を飛躍的に高める施策なのです。

従業員満足度の向上と離職率の低下が期待できるため

DE&Iの取り組みは、従業員一人ひとりが尊重され、自分らしく働ける職場環境の実現に直結します。性別や年齢、国籍、性的指向、障がいの有無といった違いに関係なく、個人の価値が認められる組織では、心理的安全性が高まり、従業員の満足度やエンゲージメントが自然と向上します。

たとえば、育児や介護との両立を支援する柔軟な勤務制度や、LGBTQ+への配慮を含む社内ポリシーの明文化、メンタルヘルスの支援体制などが整備されている企業では、従業員が安心してキャリアを築くことが可能になります。また、自分の属性やライフステージに関係なく評価される公平な人事制度があることは、従業員の信頼を醸成し、組織への定着にも大きく貢献します。

また、制度の整備だけでなく、経営層自らが多様性を尊重し、現場の声に耳を傾ける姿勢を持つことで、組織全体の価値観や風土が変わっていきます。トップの意識変化が社員に伝わることで信頼感が生まれ、自分の意見が尊重されていると感じる従業員のエンゲージメントが向上し、主体的に働く意欲や組織への貢献意識が高まるでしょう。

結果として、離職率の低下や採用コストの削減につながり、人的資本の維持・強化においても大きな成果をもたらします。DE&Iは働く人々の満足度を高めると同時に、企業の競争力を継続的に支える基盤となるのです。

グループシンクを防げるため

グループシンク(集団浅慮)とは、下記のような同質性の高い組織が陥りやすい意思決定パターンを指します。

  1. 自分たちは大丈夫と思い込む
  2. 自分たちの集団固有の道徳を信じる
  3. 集団としての合理性を重んじる
  4. 集団外のグループを固定観念で捉える
  5. 都合の悪い情報を遮断する
  6. 全員の意見が一致することを良しとする
  7. 集団内の異論を認めない・異論者へ圧力をかける
  8. 集団の規範を擁護する

出典:ResearchGate「Irving L. Janis’ Victims of Groupthink(Fig 1)

企業がDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進することで、このグループシンクを防ぐ効果が期待できます。多様な属性・価値観・背景を持つ人材が組織内に存在し、かつそれぞれが尊重され、自由に意見を述べられる環境が整えば、物事を多角的に捉える視点が生まれます。これは、意思決定の過程で異なる視点やリスクへの指摘が出やすくなり、結果としてより合理的で創造的な判断が可能になることを意味します。

また、グループシンクは経営層にも起こりやすい現象です。特に同質的な経営陣で構成された組織では、異論が出にくく、既存の価値観や戦略に固執しがちです。これにより、市場変化への対応が遅れたり、リスクの見落としが生じたりすることがあります。DE&Iを推進することで、多様な視点や経験を持つ人材が意思決定に関与し、盲目的な同調を防ぐことが可能になります。また、多様性があることで「なぜそれが最善か」を問い直す習慣が根づき、より柔軟かつ革新的な経営判断が期待できます。DE&Iは現場だけでなく、経営層こそが率先して取り組むべきテーマなのです。

社会的責任を果たすことにより、社会的信頼が向上するため

DE&Iに積極的に取り組むことは、ステークホルダーからの信頼を得る上で非常に効果的です。それは結果的に企業のブランド価値にもつながります。消費者や投資家、就職希望者を含む多くの人々は、企業が社会的責任を果たしているかどうかを重視しており、DiversityやInclusionへの姿勢は、その判断基準のひとつとなっています。

たとえば、女性や外国人、LGBTQ+、障がい者など、多様な属性の人々が活躍している企業は、社会の変化に柔軟に対応している組織として高く評価される傾向があります。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の広がりにより、DE&Iは単なる内部施策ではなく、企業価値を評価する重要な指標にもなっています。企業がその取り組みを外部に発信することで、信頼性が向上し、ブランドの差別化や優秀な人材の獲得にもつながります。DE&Iは、社会との関係性を築き、企業の持続可能性を高める上で不可欠な要素となっているのです。

グローバル市場での競争優位性が獲得できるため

グローバル化が進む現代において、多様性と包摂性を備えた組織づくりは、グローバル市場での競争力を高めるうえで不可欠です。国や文化、言語、価値観が異なる環境でビジネスを展開するには、現地のニーズや商習慣を的確に把握し、それに応じた戦略を柔軟に立案・実行できる体制が求められます。

DE&Iを推進することで、多様な国籍やバックグラウンドを持つ人材が組織内で活躍できる環境が整い、現地との橋渡し役や市場理解の促進に大きく寄与します。また、多国籍チームは国際的な案件に対して高い適応力と発想力を持ち、ビジネスのスピードや品質を向上させることが可能です。さらに、グローバル企業としての姿勢を内外に示すことは、現地顧客やビジネスパートナーからの信頼獲得にもつながります。

DE&Iは、単なる社内文化の話にとどまらず、国際市場で存在感を高めるための戦略的基盤でもあるのです。

DE&I推進のために企業が取るべき具体的なアクション

ここでは、企業がDE&Iを実効的に推進するために必要な施策を具体的に紹介します。理念だけにとどまらず、組織に根付かせるための実践的な取り組みが重要です。

経営層の意識改革

 制度や評価制度をいくら整備しても、それが実際に機能し、組織全体に浸透するためには、経営層の意識改革が欠かせません。なぜなら、制度は形だけ整っていても、運用する側の価値観や姿勢によって、その実効性が大きく左右されるからです。たとえば、DE&Iを推進する制度を導入しても、経営層が「形だけで十分」と考えていれば、現場では本気で取り組まれず、結果として形骸化してしまいます。経営層自らが多様性や公正性の価値を深く理解し、実践することで初めて、制度が現場で信頼され、社員の納得感やエンゲージメントを高めることができます。

経営層が意識改革を行うためには、経営層自身が無意識の偏見や多様性に関する正しい知識を学ぶことが出発点となります。特に重要なのは、自らの立場に無自覚な「マジョリティの特権」に気づくことです。マジョリティの特権とは、社会の中で多数派に属する人々が、自覚せずに享受している構造的な利得や優遇のことを指します。無意識に優遇されてきた構造を理解することで、真に公平な組織変革が可能になるといえるでしょう。また、経営層自身がDE&I推進制度の利用や発信を通じてロールモデルとなり、現場の声に耳を傾けることで、信頼と共感が生まれるものだといえます。多様な視点を持つ経営陣の登用も有効であり、こうした取り組みを通じて、DE&Iは初めて実効性を持つのです。

経営層のコミットメントとビジョンの共有

DE&Iの推進において、経営層の明確なコミットメントと社内外への継続的な発信は不可欠です。

経営層の意識改革がなされないままでは、DE&I施策が表面的な取り組みにとどまり、現場に本質的な変化が生まれません。トップが多様性の価値を理解せずに制度だけ導入しても、社員の共感や協力を得られず、逆に形骸化する恐れがあります。経営層が本気で取り組む姿勢を示さなければ、組織全体に一体感が生まれず、DE&I推進は停滞してしまうでしょう。

そのため、企業文化の変革や組織全体への浸透には、トップの意志が強く求められます。経営陣がDE&Iを「経営戦略の一部」として明言し、その背景にある価値観や目指す姿を言語化して示すことで、全社的な行動の方向性が整い、従業員の理解と共感を得やすくなります。

また、数値目標の設定やKPIの開示なども、実効性を高める上で有効です。社外に対しても、サステナビリティレポートやプレスリリースを通じて積極的に発信することで、ステークホルダーからの信頼を獲得できます。トップが口先だけではなく、制度設計や人材登用にも一貫した姿勢で関与することが、DE&Iの定着と推進を加速させる大きな鍵となるのです。

DE&I推進のためのリーダーシップと組織体制の強化

DE&Iを効果的に推進するためには、経営層の強いリーダーシップと、それを支える専門的な組織体制の整備が不可欠です。DE&Iが人事部門の一部として扱われている場合、DE&I推進が全社的な戦略として十分に機能していないケースも見受けられます。

しかし、DE&Iは単なる人事施策ではなく、企業の持続的な競争力やイノベーションを生み出すための基盤であり、経営層自らがその価値を明確に打ち出し、主体的に関与することが求められます。具体的には、チーフ・ダイバーシティ・オフィサー(CDO)の任命や役員レベルで構成するDE&Iリーダーシップチームの組成、DE&I推進専門チームの設置、社内外への明確な方針の発信などが効果的です。

また、推進状況を定期的に社内報やレポートで共有することで、従業員の関心と当事者意識を高めることができます。こうした体制整備とトップダウンの意志表明は、全社一丸となったDE&Iの実現に向けた重要な出発点となります。

人材採用・昇進におけるバイアスの排除

DE&Iを推進するうえで避けて通れないのが、採用や昇進の場面における無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)の存在です。性別や年齢、出身、学歴といった外的要因に基づく先入観が、候補者の能力や適性を正当に評価する妨げとなり、公平な機会提供を阻んでいるケースは少なくありません。こうしたバイアスを排除するためには、まず採用担当者や管理職に対して継続的な研修を行い、自らの認知の偏りに気づくことが第一歩となります。

また、採用過程における評価基準の明文化や、面接官の多様性を担保し、かつ複数人にするなどの仕組みづくりも有効です。昇進や評価のプロセスにおいても、客観的な実績に基づく判断や透明性の高い基準設定が求められます。多様なバックグラウンドを持つ人材が「公正に扱われている」と実感できる環境が整えば、エンゲージメントの向上や人材定着にもつながり、組織全体の信頼性を高める効果が期待されます。

多様な働き方を支える制度設計

DE&Iを実現するうえで欠かせないのが、さまざまなライフスタイルやニーズに対応できる柔軟な制度の整備です。働く人々の価値観や生活環境は年々多様化しており、従来の画一的な就業モデルでは、優秀な人材の活躍を阻む要因となりかねません。

たとえば、育児・介護と仕事の両立を支援する短時間勤務や在宅勤務制度、フレックスタイム制、週休3日制度などは、個々の事情に応じた働き方を可能にします。また、障がいのある方や高齢者に向けた職場の物理的・制度的バリアフリー対応も重要です。

こうした制度は単なる福利厚生ではなく、戦略的人材活用の一環として捉えるべきものです。導入するだけでなく、実際に利用しやすい雰囲気や職場文化を醸成することも不可欠です。制度が整備され、多様な人が無理なく能力を発揮できる環境が整えば、組織全体の生産性やエンゲージメントも大きく向上します。

定量的な評価指標と改善プロセスの構築

DE&Iの推進を持続的かつ効果的に進めるためには、活動を評価するための定量的な指標と、それに基づく改善プロセスの構築が不可欠です。企業の多くがDE&Iを「理念」として掲げていますが、実際にどの程度浸透し、成果が出ているかを客観的に測る仕組みがなければ、取り組みが形骸化するリスクがあります。

たとえば、女性管理職比率、外国籍社員の登用状況、制度の利用率、社内アンケートによるDE&I意識調査や心理的安全性の指標など、具体的なデータをもとに定期的に現状を可視化することが重要です。また、得られた数値結果に基づいて改善策を立案・実施し、その効果を再度検証するPDCAサイクルを回すことで、DE&I施策の質を高めることができます。

評価指標は単なる「数字」ではなく、企業の進化を促す指針として活用されるべきものです。明確な目標と検証可能な指標を持つことが、DE&Iの継続的な推進と実効性確保のカギとなります。

従業員向けDE&I研修の実施

DE&Iを組織文化として根付かせるためには、従業員一人ひとりの意識改革が不可欠です。そのための有効な手段のひとつが、DE&Iに関する社内研修の実施です。特に、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づくことは、多様な価値観や背景を持つ他者と協働するうえでの第一歩となります。

研修では、DE&Iの基本概念や最新の事例、差別や排除が起きるメカニズム、そして誰もが活躍できる組織づくりの重要性などを具体的に学びます。また、座学だけでなく、ディスカッションやロールプレイを交えた参加型の形式にすることで、受講者の理解度や当事者意識を高めることができます。管理職層にはより実践的な内容を、一般社員には身近な事例を用いた内容を提供するなど、階層ごとの課題に応じた設計が効果的です。定期的かつ継続的に実施することで、DE&Iの価値が組織全体に浸透し、現場レベルでの行動変容へとつながります。

DE&Iを実践する企業事例

ここでは、日本企業によるDE&Iの実践的な取り組みを紹介します。制度の整備だけでなく、企業文化や働き方の改革を通じて、どのように多様性・公平性・包括性を実現しているのかを具体的に解説します。

ソニーグループ株式会社

ソニーグループは、DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)を企業文化の中核に据え、多様性を尊重する職場環境の実現に力を入れています。世界各拠点で開催される「Diversity Week」では、性別・国籍・障がい・性的指向などに関するイベントを通じ、社員の意識向上を図ってきました。さらに、毎年の社員意識調査によって職場の実態を把握し、継続的な改善に取り組んでいます。

人権標語の社内募集や表彰制度も設け、社員とその家族に対する意識啓発を強化。ライフイベント支援策「STAND BY YOU!」では、育児・介護・治療など多様な事情に対応できる制度を整備しています。女性リーダー育成では、研修制度を通じて活躍の場を広げており、「えるぼし」認定も取得。障がい者雇用においては、ユニバーサルマナー研修やバリアフリー診断を実施。LGBTQ+への配慮も徹底されており、相談窓口や社内規定の整備により、誰もが安心して働ける環境を整えています。

参考:ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社「DIVERSITY, EQUITY & INCLUSION

日本IBM株式会社

IBMは、DE&Iを企業文化の中心に据え、全社員が活躍できる環境づくりに取り組んでいます。グローバルでは、メンタリングやストーリーテリングを通じてアライシップ(支援者行動)を促す「I’m In」キャンペーンや、少人数での対話を行う「Allyship Circles」を展開しています。また、全社員を対象にハラスメント防止研修も実施しています。さらに、性別や人種によらず同一労働同一賃金を徹底し、格差の是正にも継続的に取り組んでいるのが特徴です。日本IBMでは、2003年からLGBTQ+支援活動を開始しました。東京レインボープライドへの参加や「LGBTQ+アライ宣言」の推進を通じ、心理的安全性の高い職場づくりを進めています。

参考:日本IBM株式会社「2023 ESG REPORT IBM Impact」「日本IBMによるLGBTQ+への取り組み

味の素株式会社

味の素グループは、DE&Iに注力し、性別・国籍・障がいの有無を問わず、誰もが活躍できる職場づくりを推進しています。2030年までに女性取締役やライン責任者比率を30%に引き上げる目標を掲げ、女性育成プログラム「AjiPanna Academy」や男性育休の促進、多国籍人材の登用を進めています。また、アンコンシャス・バイアス研修やDE&Iランチセミナーを開催し、社員の意識改革も推進。性的マイノリティ支援や障がい者への配慮も制度化され、2023年度には約300人の従業員がDE&I活動に参画しました。多様性を活かす企業風土づくりに注力しています。

参考:味の素株式会社「多様性(DE&I)への取り組み」「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

株式会社資生堂

資生堂は、DE&Iに対して独自のアプローチを展開しています。DE&Iの実効性を検証・発信する「資生堂DE&Iラボ」を設置し、女性活躍や組織文化に関する研究データを施策に反映。2024年時点で女性管理職比率は40%に達しており、2030年には男女比50:50を目指す方針を掲げています。さらに、男性育休取得率の向上や、フレキシブルな働き方を推進することで、性別やライフスタイルにとらわれない職場環境づくりを進行中です。データと実践を両輪に、持続可能な多様性社会の実現を目指す姿勢が際立っています。

参考:株式会社資生堂「資生堂DE&Iラボ」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

DE&Iの課題と今後の展望

ここでは、日本企業がDE&Iを推進する上で直面している課題と、今後の展望について解説します。制度整備だけでなく、組織文化や意識改革の側面からも考察します。

数値目標の形骸化と本質的な文化変革の必要性

日本企業におけるDE&I推進では、女性管理職比率や障がい者雇用率などの数値目標が設定されることが一般的です。​しかし、これらの目標が形骸化し、実質的な組織文化の変革につながっていないケースも少なくありません。​

たとえば、女性管理職の比率を上げるために形式的な昇進を行っても、実態が伴わなければ、真のInclusionとは言えません。​また、アンコンシャス・バイアスが根強く残る組織では、多様な人材が活躍しにくい環境が続いています。​このような状況を打破するためには、数値目標の達成にとどまらず、組織全体の意識改革や風土の醸成が不可欠です。

​具体的には、経営層のコミットメントの明確化、社員一人ひとりの意識向上を図る研修の実施、そして多様性を尊重する価値観を共有することが求められます。​これにより、DE&Iが単なる目標達成の手段ではなく、組織の持続的成長を支える基盤として機能するようになります。​

ジェンダーギャップと女性活躍推進の課題

日本におけるジェンダーギャップは依然として大きな課題です。​世界経済フォーラムが発表した2024年のジェンダーギャップ指数では、日本は146カ国中118位と低い順位にとどまっています。​特に政治や経済分野での女性の参画が遅れており、企業においても女性管理職の割合が低い状況が続いています。

​この背景には、長時間労働や育児・介護との両立の課 、アンコンシャス・バイアスなど、複合的な要因が存在します。​また、女性のキャリア形成を支援する制度が整備されていない企業も多くあります。​

これらの課題を解決するためには、柔軟な働き方の導入や育児・介護支援制度の充実、そして女性のキャリア形成を支援するメンター制度の導入、男性社員とりわけ男性経営者たちの意識改革など、多角的なアプローチが求められます。​さらに、経営層が率先してジェンダー平等の重要性を発信し、組織全体で取り組む姿勢を示すことが、女性活躍推進の鍵となります。​

外国人・障がい者雇用とインクルーシブな職場環境の構築

日本企業における外国人や障がい者の雇用は年々増加していますが、インクルーシブな職場環境の構築には依然として課題が残っています。​言語や文化の違い、物理的・心理的なバリアなどが、これらの人々の活躍を妨げる要因となっています。​

たとえば、外国人社員が日本語でのコミュニケーションに苦労し、会議の内容を理解しにくい状況や、障がい者が物理的なバリアフリーが整っていない職場で働くことの難しさが挙げられます。​

これらの課題を解決するためには、多言語対応のコミュニケーションツールの導入や、職場のバリアフリー化、さらにはダイバーシティ研修の実施など、具体的な施策が必要です。​また、全社員が多様性を尊重し、互いの違いを受け入れる文化を醸成することが、インクルーシブな職場環境の実現につながります。

まとめ

DE&Iは、単なる理念ではなく、企業が持続的に成長していくための経営戦略そのものです。多様な人材が互いに尊重され、能力を発揮できる環境を整えることは、イノベーションの創出や組織の活性化につながり、結果として企業の競争力を高める効果があります。

本記事では、DE&Iの基本的な概念から、企業にとっての重要性、具体的なアクション、実践事例、そして現実的な課題までを解説しました。いずれのフェーズにおいても重要なのは、経営層の強いコミットメントと、現場の共感・行動を促す仕組みです。

数値目標の達成だけにとどまらず、組織文化や働き方、評価制度、風土改革といった本質的な部分に踏み込んだ取り組みが求められます。DE&Iの推進は一朝一夕で完結するものではありませんが、確実に企業の未来を支える礎となります。今こそ、一人ひとりがDE&Iの担い手として、持続可能な社会と企業づくりに向き合うときです。

もし、自社にDE&Iを推進するにあたって課題を感じている場合は、コンサルティング会社に相談してみてはいかがでしょうか。ウーマンズリーダーシップインスティテュートは、DE&Iに特化したコンサルティングサービスを展開しています。丁寧なヒアリングとリサーチを通して企業の課題を深堀りし、DE&I意識調査、研修の実施、e-Learningの提供、スポンサーシップ制度構など、それぞれの企業に合わせた最適なアプローチで、DE&Iの課題を解決していきます。初回の相談は無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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