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リップシャッツ信元夏代×川嶋治子対談『スピーチ・プレゼンは情報の整理術』(前編 )

2019年7月に「20字に削ぎ落とせ ワンビックメッセージで相手を動かす」(朝日新聞出版社)を出版され、ニューヨークを拠点に活躍されているリップシャツ信元夏代さんをゲストに迎え、弊社代表川嶋と対談いたしました。

この対談では「スピーチ・プレゼンは情報の整理術」と題して、スピーチの成功に最も大事なものは何か?について、リップシャッツ信元夏代さんに解説いただきました。

対談の様子はPodcast番組「川嶋治子のLead Yourself, Lead Others!」にて音声でもお聴きいただけます。

Contents

リップシャッツ信元夏代×川嶋治子対談『スピーチ・プレゼンは情報の整理術』(前編 )

川嶋治子(以下、川嶋):こんにちは。川嶋治子です。リーダーになって人前で話す機会が増えて、スピーチ苦手なんだよなとか、もっと上達できたらなと思われたこと、ありますよね。できることだったら、スティーブ・ジョブスやオバマ元大統領のように一瞬にして人の心を掴むパワフルなプレゼンがもし自分にも出来たら、より大きなことが成し遂げられるんじゃないか、もしかしたら、自分の人生が大きく変わるんじゃないかって考えられたこと、一度くらいはあるんじゃないでしょうか。実際にスピーチやプレゼンには人を動かす力があるんですよね。卓越したリーダーは、人の心を動かす達人でもあります。今日はそんなみなさんにご紹介したい、スピーチの達人、それも世界中から優秀な人材が集まるNYでプロフェッショナルスピーカーとして第一線で活躍されている素適なゲストの方にお越し頂いています。

本日のゲスト、リップシャッツ信元夏代さんです。
事業戦略コンサルタント、プロフェッショナルスピーカーとしてNYを拠点にご活躍されていらっしゃいます。トーストマスターズという国際的なスピーチのクラブがあるのですが、夏代さんはそのトーストマスターズで2019年にはなんと、世界トップ100入りを果たされ、スピーチの極意をまとめた書籍「20字に削ぎ落とせ」を出版されたばかりです。夏代さん、今日はお越し頂きありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

リップシャッツ信元夏代氏(以下、信元):ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

歌って踊れるコンサルタント

川嶋:それでは先ず、夏代さんから自己紹介をお願いできたらと思います。

信元:リップシャッツ信元夏代と申します。歌って踊れるコンサルタントです。
まず、コンサルタントとしてAspire Intelligence という会社をやっているんですけれど、そこで日本からアメリカに進出してくる会社の戦略のお手伝い、市場調査・分析・戦略立案のお手伝いをする傍ら、アメリカでプロフェッショナルスピーカーとして色々と登壇をしたり、みなさんのスピーチのブレイクスルーのお手伝いをしています。
多分みなさんがご興味があるのが「歌って踊れる」の部分じゃないかなと思うんですけれど(笑)

川嶋:私も興味あります!(笑)

信元:大学の時にミュージカル研究会というサークルに入っていまして、これは実は研究ではなくてやる方なんですけれど、そこで歌っていたと。今は専らカラオケなんですけれど歌大好きです。踊りの部分は、3歳でバレエを始めまして、中高は創作ダンス、大学ではミュージカルでシアターダンス、アメリカに渡ってからは競技ラテンダンスの選手をしていまして。

川嶋:えぇ~!すごーい!

信元:映画の「Shall we dance(シャルウィーダンス)?」ご覧になったことあります?

川嶋:はい。

二人:「Shall we dance~♪」

信元:あの映画の竹中直人、ラテンやってましたよね?

川嶋:やってました、やってました。

信元:あとは、ウッチャンナンチャンの社会人社交ダンス。

川嶋:あの、コンテンストに出るやつですよね?

信元:あれの杉本彩ですね。ラテンです。

川嶋:ラテンの!

信元:ああいった、ラテンの選手をやっています。ということで「歌って踊れるコンサルタント」信元夏代でございます(笑)

川嶋:レアでございます(笑)

ブレイクスルーメソッド誕生ストーリー

川嶋:ぜひ、そんな夏代さんに「ブレイクスルーメソッド」と名付けられていらっしゃるパブリックスピーキングのメソッドについておうかがいしていきたいと思います。今回日本では「20字に削ぎ落とせ」というタイトルでスピーチの極意をご出版されていらっしゃるんですけれども、そのメソッドの誕生秘話といいますか、メソッドが生まれたストーリーをお聞かせいただけますか?

信元:はい。先ほどトーストマスターズのご紹介をいただいたんですけれど、トーストマスターズというところでは毎年スピーチのコンテストをやっているんですね。初めてコンテストに出たのは2013年だったんですが、意外とトントントンと進んでしまって、州の準決勝に行ったところで、黒人のジャニスという女性がツカツカツカっとやってきて、「あなた筋が良いから、コーチングしてあげるわよ」って言われたんです。それで「タダでコーチングしてもらえるんだったら」くらいの軽い気持ちでお願いしたら、ジャニスのコーチングで最初に言われたのが「あなたのスピーチにはメッセージが色々ある。何が一番いいたいのか?いろいろなことを言いすぎているから、削ぎ落とす勇気を持ちなさい」といわれたんですね。

削ぎ落とす勇気

川嶋:本の1ページ目にも書かれていますよね?「削ぎ落とす勇気ありますか」って。

信元:そうなんです。結構、スピーチだといろんなことを詰め込みたいと思ってしまうんですけれど。当時の私も「とにかく言いたいことはギューっと凝縮していっぱい詰め込みました。これ以上伝わらないということはないでしょう。」と、半ば自信のようなものがあったんですけれど、それが全く逆だったということがわかって衝撃だったんですね。そこから、いらない周辺情報は徹底的に削ぎ落として、伝えたいメッセージ、相手に刺さってほしいメッセージ一つだけに集中して伝えないと、スピーチっていうのは相手に届かないし、ましてやビジネスの場合は伝わるだけでなくて、相手が動いてくれる、何かの決断をしてくれる、買ってくれる、そこまで行かないと意味がないわけですから、そこまでいくためには徹底的に削ぎ落としが必要なんだということをそこで学んで、何年もかけて削ぎ落とす技術を身につけてきたんです。英語では10ワードって言われているんですね。それを日本語にすると倍の20文字、ということで「20字に削ぎ落とせ」というコンセプトが固まったんです。

川嶋:なるほど。興味深いですね。実体験に基づくメソッドで、英語だと10ワード、日本語では20字に削ぎ落とせ、ということですね。メソッドのポイントについてもお聞きしていきたいんですが、私が知っているのはやはり、夏代さんがよくおっしゃる「ワンビックメッセージ」ですよね?

信元:はい。本のサブタイトルにもなっているんですが、ブレイクスルーメソッドでいろんなポイントがある中で、たったひとつに絞り込んでお伝えするとするならば「スピーチ・プレゼンは情報の整理術だ」ということなんです。

川嶋:情報の整理術。

信元:はい。どういうことかと言いますと、伝えたいことは沢山ある。情報というのは沢山あるんですが、情報にはいろんな種類やレベル感のものがあるので、それを整理をして、特に聞き手が何を求めているのか、聞き手の興味や課題がどんなところにあるのか、それを視野においた上で、聞き手にとって役に立つ情報って何だろう?という風に徹底的に絞り込んでいく。そのためにはどうしたら良いかというと、情報をいろんなカテゴリ毎に整理をして、扱いやすくした上で刺さるものを探していかなきゃいけないわけなんですね。それってまさにロジカルシンキングの手法なんですけれど。

川嶋:確かに。

信元:なので、その情報が綺麗に整理ができたら、もうメッセージはだいぶクリアになっているということなので、ブレイクスルーメソッドの中でよくお伝えしているのは(スピーチでは)伝え方とか、話し方とよく言われますけれど、それは伝えるべきメッセージが削ぎ落とされて明確になった後での話なので、その前にやるべきこと、7割くらいの時間を情報の整理に費やしていただきたいんです。そこで徹底的に絞り込んでメッセージをこれ以上ないくらいに明確にする。そうすることで、それが何語であっても相手に伝わる、相手が動いてくれるメッセージになると。それがブレークスルーメソッドの肝の部分ですね。

川嶋:なるほど。徹底した相手目線で相手に伝えたいことを絞り込んでワンビックメッセージを作っていくと、話し手ご本人も確信を持って自分のメッセージを話しやすくなるではないかと感じました。

 

20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす

2019年7月5日 朝日新聞出版より発売

やめられない、とまらない

信元:その通りです。その良い例がTVコマーシャルの中でキャッチフレーズがあるじゃないですか。TVって15秒とか30秒なので短くなっているというのがあるんですけれど、スピーチにも短くするというのがありまして、「やめられない、とまらない、かっぱえびせん」ありますよね?

川嶋:ありますよね。日本全国誰でも知っている・・

信元:そうですね。これ、18文字なんですけれど、これをですね、えびせんを開発した人の気持ちになって、こんな良いことも伝えたいと盛り盛りな感じのスピーチにするとこんな風になると思うんです。「このえびせんは、オーガニックの小麦を使って、天然の塩を練りこんだ生地の中に、3種類の天然の海老を頭から尻尾まで殻を砕いて練りこんだので、非常に香ばしい良い香りがするえびせんです。そして、これを揚げるのではなく炒ってあるので、生地がフワッとしてサクサクした食感が楽しめます。だからこれを食べ始めると、止まらないようなとっても美味しいえびせんなんです。どうぞみなさん召し上がってください」長いですよね?

川嶋:長い。でも、ありがち!

信元:そうですよね!ここまで言ってしまうとどういうことが起こるかというと、聞いている人によって「海老って3種類も入ってるんだ」とか「炒ってあるんだ、揚げてないんだ」とかいろんなところに思考がいってしまうわけです。そうすると、みんなの頭の中に違うことが浮かんでしまうと、一番伝えたい事がボヤっとしてしまって、だから何なんだろうと言った時にちょっと不明瞭なメッセージになるわけですね。そこで、聞き手の視点、ここでは消費者ですよね?消費者にとって何が大事かって言うと、スナックですから、どれだけ美味しいの?って事ですよね?製法がどうかとか、そういうマニアックな人は多分いなくって、美味しいのかどうか?なので、その視点に絞り込んで、どこまで美味しいのかっていうと「やめられない、止められない、かっぱえびせん」それ位美味しいんですよ。そこに絞り込んだ。だから刺さるんですよね。

川嶋:あと、五感というのもあって、つい口ずさんじゃう。

信元:そうですね。リズム。

川嶋:リズムがあって、長さも長すぎないというのも記憶に残って刺さるっていうのもあるんですよね?

信元:そうですね。これが20字以上になってしまうと、長くなりすぎて文章って感じになってしまうので、刺さらなくなってしまう。

川嶋:確かに。海老の種類とかお塩のこととか、炒り方はプロセスであって、食べるお客さんからすれば「その結果、止まらないくらい美味しい」が気になるってことですよね?

信元:はい。それがワンビックメッセージですよね。

川嶋:そういうことですよね。そこがトリッキーで、開発者って想いがあるから、そこに込めた想いとか技術とか素材のことを言いたくなっちゃうけど、相手が一番聴きたいのは、その結果とまらないくらい美味しいってところなんだっていうところを、削ぎ落としていってメッセージを作るのが大事ってことですよね。

戦略コンサルタントならではの「ピラミッド構造」

信元:そうですね。ただし、これがビジネスプレゼンだった場合には「やめられない、止まらない」だけで説得力があるのかというと、やっぱりないわけです。

川嶋:確かに。「何故?」ってなりますものね。

信元:そうなんです。そこで出てくるのがメインポイントで、ワンビックメッセージの裏付けとなるような根拠とか理由、背景。それを説明するようなメインポイントが3つくらい出てくると説得力が出てくるわけなんです。その説明がワンビックメッセージよりも一段下がったレベルの情報、つまり、詳細、何かを説明できるような情報がメインポイントになるので、例えば、海老の種類、天然素材を使っている、製法がメインポイントにくると、なんで「やめられない、止まらないのか」というと、天然素材のすごくいい素材を使っているから美味しい。(それが)メインポイントの1つ目。製法が揚げているのではなく炒ってある、だからやめられない止まらないんです。が2つ目。

そうやって、ロジカルシンキングの世界では「ピラミッド構造」と言いますけれど、大きな情報が頂点に来て、その下の下層情報がピラミッドの下にきて、上の情報を説明する。それをブレイクスルーメソッドでは、ワンビックメッセージがトップに来て、メインポイントがその次の層にくる。そして、ワンビックメッセージを説明する。そうなると説得力がだいぶ出てきますね。

川嶋:完全なストラクチャーがあるわけですよね。

信元:そうです。このピラミッド構造を使って、ロジカルシンキングを使って、情報を整理していく整理術。これはまさに戦略コンサルならではの思考法なのかなと思うんですけれど。

川嶋:そうですね。

信元:スピーチ・プレゼンを作ろうとすると、どう伝えようかというところに行きがちなんですけれど、もう一段深く掘っていかないと刺さるメッセージは作れませんので、思考法なんですよね。情報の整理術そのものだと思います。

川嶋:ワンビックメッセージ、そのワンビックメッセージを説明する根拠となるメインポイント、もう一つ何かこのメソッドの特徴となるポイントをご紹介するとしたら?

スピーチ・プレゼンを成功に導く「KISSの法則」

信元:KISSの法則ってあるんですけれども、これは普通はKeep it simple stupid とか、Keep it simple short と言われるものなんですけれども、ブレイクスルーメソッドでは、それをもう少し発展させて Keep it simple specific、つまりシンプルかつ具体的に、という意味で使っています。特に海外に出られて長い方だとカタカナが多くなっちゃうとか、専門性の高い方だと専門用語が多くなっちゃうということがありますけれど、いかにシンプルな言葉を使って、それこそ中学生・小学生でもわかるような単語でやさしく語れるか、かつ具体的に頭の中にそれが想像できるような具体性を持って喋れるか、というところなので、誰でも分かるような、映画のように映像がない中でも言葉だけを聴いてそれを想像できるか、Keep it simple secific、それを心掛けましょうと言っています。

川嶋:ありがとうございます。今日のお話で教えて頂いたポイントとしては、人の心に刺さるスピーチというのは、どう伝えるか、ではなく、いかに相手が最も欲しいワンビックメッセージを作れるか、そしてそれを支える根拠となるメインポイント、そして、Keep it simple specific、詳細にわかりやすく伝えることが大事ですよ、ということですね。

信元:そうですね。スピーチ・プレゼンは情報の整理術。

川嶋:スピーチ・プレゼンは情報の整理術。これ、今日のキーワードですね。

信元:そうですね。ワンビックメッセージ。

川嶋:はい。今日教えて頂いた夏代さんのパブリックスピーキングのメソッドをグローバルリーダー育成をする弊社のプログラムの中でも日本でご指導頂くことができるようになりました。ご関心おありの方は「ウーマンズリーダーシップ」で検索頂いて弊社のHPからお問い合わせください。それでは、本日のゲストはNYからお越しくださいました、リップシャッツ信元夏代さんでした。夏代さん今日は素敵なお話をありがとうございました。

信元:ありがとうございました。

(後編に続く)

解説・ゲスト:『20字に削ぎ落とせ』著者 リップシャッツ信元夏代氏

インタビュアー:ウーマンズリーダーシップインスティテュート株式会社代表取締役 川嶋治子

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